数学関連


円に内接するn角形の中で面積が最大となるのは正n角形である
「円に内接する多角形の中で,正多角形が一番大きな面積を持つことの初等的証明」を高校生が考えたという話題を知りました。
しかし,その証明は高校生が考えたとは思えない高度なもので,一般の高校生が理解するには難しいのではと感じました。
そこで,難しい数式をなるべく用いない様に留意して,5つの証明を考えました。(2024年4月~6月)
初等整数論の初歩
初等整数論の初歩を解説しました。
高校の教科書の「整数の性質」には,証明がきちんと書かれていないので,それを埋めるために,高木貞治先生の「初等整数論講義」などを参考にしました。
教科書や参考書などでは満足できない数学好きの高校生向きで,最難関大学を目指す高校生のために,大学入試問題を豊富に取り入れています。
原始根の存在定理と平方剰余の相互法則
初等整数論の初歩の続編で,原始根の存在定理と平方剰余の相互法則の証明を書きました。
大学受験のレベルは超えている内容で難しいですが,数学ボーイや数学ガールにも理解できるように,丁寧に証明したつもりです。
高木貞治先生の「初等整数論講義」などを参考にしました。
フィボナッチ数列9999
問題 1
a1=1,a2=1,an+2=an+1+an  で定義されるフィボナッチ数列
    1,1,2,3,5,8,13,21,……
の項の中に,下4桁が9999となるものが存在することを示しなさい。
一般に,nを任意の自然数として,下n桁がすべて9になる項が存在します。

問題 2
第n項には,1がn個並ぶ数列
   1,11,111,1111,11111,……
を考えます。この数列の項の中に,2の倍数と5の倍数は存在しません。
しかしながら
    111は3の倍数,111111は7の倍数,11は11の倍数,111111は13の倍数,1111111111111111は17の倍数,……
などとなります。
一般に,2,5以外の素数について,この数列の項の中に,その素数で割り切れるものが存在します。
2027年に出題するなら,次のような問題になります。
「この数列の項の中に2027で割り切れるものが存在することを示せ。」

さらに一般化すると,次のような問題になります。
「自然数mが2でも5でも割り切れなければ,この数列の項の中に,mで割り切れるものが存在することを示せ。」

なお,次の数は素数です。1が並ぶ素数は他にも存在するようです。
 11
 1111111111111111111
 11111111111111111111111
 11111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111
 11111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111

問題1は解答を付けましたが,問題2は解答を付けません。問題1の解答を参考にして考えてみて下さい。問題2には,問題1と同様に鳩ノ巣原理を用いる証明 の他に,初等整数論のオイラーの定理を用いる証明があります。
13枚の金貨
金貨が13枚あって,その中に1枚だけ重さが違う偽金貨がある。偽金貨は,本物より重いか軽いか分からない。その偽金貨を,天秤 を3回だけ使って見つけよ。ただし,偽金貨が本物より重いか軽いかを見分けなくて良いものとする。
上記の問題を一般化して,(3n-1)/2枚のとき,天秤をn回だけ使って見つける証明ができたので掲載します。
素数が無限に存在することの証明
補題 a,bを互いに素な整数とすると,ab と a+b は互いに素である。
証明 ab と a+b が互いに素でないと仮定すると,ある素数pが存在して,整数k,lを用いて ab=kp,a+b=lp と表される。
このとき,ab=kpより,a,bの少なくとも一方はpの倍数である。
aがpの倍数であるとすると,b=lp-aよりbがpの倍数となり,aとbが互いに素であることに矛盾する。
bがpの倍数であるとしても,同様に矛盾する。
ゆえに,ab と a+b は互いに素である。

証明の基本形(以下のすべての証明は,この証明の変形です。)

自然数Nは,「N=K×L,KとLは互いに素な自然数」と分解できる。(特にL =1はこれを満たす)
このとき,K×L と K+L は互いに素であるから,N´=N×(K+L) の異なる素因数の個数は,Nの異なる素因数の個数より多い。
この操作は,無限に続けることができるから,素数は無限に存在する。

ユークリッドの証明(証明の基本形と同じになるように,少し変形 しました。)
p1, p2,……,pn が異なる素数の組であるとき,p1×p2×……×pn と P=p1×p2×……×pn+1 は互いに素である。
よって,Pの素因数の1つをpn+1とすると,p1, p2,……,pn, pn+1も異なる素数の組である。
この操作は,無限に続けることができるから,素数は無限に存在する。

エラトステネスの篩による証明
nを自然数として,集合Enと自然数pnを次のように帰納的に定義する。
   Ⅰ  2以上の自然数の集合をE1とし,p1=2とする。
   Ⅱ Enの要素からpnの倍数を除いてできる集合をEn+1と する。
        このとき,p1×p2×……×pn+1 はp1, p2,……,pn の倍数でないから,En+1の 要素であり,En+1は空集合でない。
        En+1の要素の最小値をpn+1と する。
Ⅱの操作は無限に続けることができ,pnは素数だから,素数は無限に存在する。

フェルマー数による証明の変形
数列 {an} は,a1を1より大きい整数として,次の漸化式により定義される数列とする。
    an+1=a1a2a3……an+1
任意の自然数nについて,an+1と ak (k=1,2,3,……,n) は互いに素であるから, {an} の各項は,どの2つも互いに素である。
よって,任意に多くの異なる素因数を作れるので,素数は無限に存在する。

サイダックの証明
nは1より大きい整数とする。n と n+1 は連続する整数であるから,これらは互いに素である。
したがって,N2=n(n+1) は少なくとも2つの異なる素因数を持つ。
同様に,n(n+1) と n(n+1)+1 は連続する整数であるから,互いに素である。
よって,N3=n(n+1){n(n+1)+1} は少なくとも3つの異なる素因数を持つ。
この操作は,無限に続けることができる。

漸化式 an+1=a1a2a3……an+1 において Nn=a1a2a3……an とおくと, an+1=Nn+1,Nn+1=Nnan +1 であるから Nn+1=Nn(Nn+1) が成り立つ。
よって,フェルマー数による証明とサイダックの証明は同等であると言える。補足証明

スティルチェスの証明の背理法を使わない変形
p1, p2,……, pn を異なる素数の組であるとき,p1×p2×……×pn と P=p1×p2×……×pm+pm+1×……×p は互いに素である。
よって,Pの素因数の1つをpn+1とすると,p1,p2,……,pn,pn +1も異なる素数の組である。
この操作は,無限に続けることができるから,素数は無限に存在する。

クンマーの証明
ユークリッドの証明において P=p1×p2×……×pn+1 を P=p1×p2×……×pn-1 にかえたもの

オイラーのφ関数を用いた証明
p1, p2,……,pn が異なる素数の組であるとき,φ(p1×p2×……×pn )=(p1-1)×(p2-1)×……×(pn -1)>1 である。
よって,p1×p2×……×pn以下の自然数で,1以外にp1×p2×……×pnと 互いに素な自然数が存在するから,素数は無限に存在する。

どの証明も,本質的にはユークリッドの『原論』にある証明の変形で,別証明という程ではないですね。
変形として,「a1,a2,……,an のどの2つも互いに素ならば,a1a2……an と a2a3……an+a1a3……an+a1a2a4……an+…… +a1a2a3……an-1は互いに素である」 ことを用いた証明もあります。

Erdősのベルトランの仮説の証明を基にした証 明
エルデシュが高校生のときに,ベルトランの仮説(チェビシェフの定理)を 2nCnの性質を用いて証明し ましたが,その証明の一部で,素数が無限に存在することが証明できます。
さらに,n≧2としてn以下の素数の個数をπ(n)とするとき,π(n)≧nlog(2)/log(n)-1 が証明できます。
また,この証明と考え方が似た,チェビシェフの証明も紹介します。
3次方程式の解の公式
3次方程式の解の公式で,カルダノの解法と若干異なる解法を紹介します。
指数関数の定義
数学Ⅱの教科書における指数関数の定義は、複雑で難解です。また、無理数乗まで拡張した証明は高校レベルを超えているので、あらすじしか書かれていません。
そこで,大学で習う知識を一部用いて、指数を実数まで拡張してみました。高校生には難しいかもしれません、教科書に不満だった方はぜひ読んでみてください。
また、教科書とは違った指数関数の定義も書いてみました。1/tの1からxまでの定積分を用いて対数関数を定義し、対数関数の逆関数を指数関数と定義したものです。
数学Ⅲは使っていますが大学数学は使っていないので、数学Ⅲが既習で、数学Ⅱの教科書の指数・対数の記述は分からないと感じた方はぜひ読んでみてください。
合成関数の微分法の公式の厳密な証明
高校の数学Ⅲの教科書にある合成関数の微分法の公式の証明が、厳密な証明ではないことは、高木貞二先生の解析概論でも指摘されて いますが、これについて解説を試みました。
ただし、高校の数学の教科書を厳密に記述したら、今でも難しいものが、ほとんどの高校生はさっぱり分からなくなると思いますので、普通の生徒にとっては今 の教科書にある証明で十分です。
数学好きの高校生は、読んでみて下さい。
単振り子
単振り子の運動方程式の厳密解と,周期の近似値を求めてみました。

円周率の2乗は無理数である
円周率が無理数である証明は、大阪大学の2003年理系後期に出題されました。その入試問題の方法を改良して,π2が 無理数であることを,高校数学の範囲で簡潔に証明しました。
さらにその証明を一般化して、次の無理数性判定の補題を得ました。 (1) において特にθ=π/2とすればπ2が無理数であることが証明され,(2) において特にθ=1とすればeが無理数であることが証明されます。

θを0でない実数とするとき,
(1) θ2,sinθ,θcosθ の少なくとも1つは無理数である。

(2) θ2,sinhθ,θcoshθ の少なくとも1つは無理数である。

円周率の有理数近似
ディリクレの ディオファントス近似定理により,次の式を満たす自然数 x,y の組は無数に存在します。
    |π-y/x|<1/x^2
実際に x<10000000000 の範囲において調べたところ,次のものを見つけました。ただし,この中には既約分数でないものも含まれています。

 3 / 1, 4 / 1, 6 / 2
 19 / 6
 22 / 7, 44 / 14, 66 / 21, 88 / 28
 333 / 106
 355 / 113, 710 / 226, 1065 / 339, 1420 / 452, 1775 / 565, 2130 / 678, 2485 / 791, 2840 / 904, 3195 / 1017, 3550 / 1130, 3905 / 1243, 4260 / 1356, 4615 / 1469, 4970 / 1582, 5325 / 1695, 5680 / 1808, 6035 / 1921
 103993 / 33102
 104348 / 33215
 208341 / 66317
 312689 / 99532
 521030 / 165849
 833719 / 265381
 1146408 / 364913, 2292816 / 729826
 4272943 / 1360120
 5419351 / 1725033, 10838702 / 3450066, 16258053 / 5175099
 80143857 / 25510582
 85563208 / 27235615
 165707065 / 52746197
 245850922 / 78256779
 411557987 / 131002976
 657408909 / 209259755
 1068966896 / 340262731
 1480524883 / 471265707
 2549491779 / 811528438
 3618458675 / 1151791169
 6167950454 / 1963319607
 8717442233 / 2774848045
 14885392687 / 4738167652
 21053343141 / 6701487259

上記のうち,既約分数で特に近似が良いものを小数で表してみました。なお,円周率は 3.14159265358979323846264…… です。

22 / 7 = 3.1428……
355 / 113 = 3.14159292……
5419351 / 1725033 = 3.14159265358981……
21053343141 / 6701487259 = 3.14159265358979323846238……

ペル方程式
初等整数論の初歩にもある,ペル方程式について解説しました。

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